オートサービスショー2019・ルポ
ISGドライブベルトの交換方法╱専用工具があれば効率的にできる
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整備業界で話題の「ISGドライブベルト」を、効率よく交換する方法。空間が狭い軽自動車のエンジンルームでの作業なので苦戦は必定と思われるが、専用工具があれば状況が一変。具体的に解説しよう。
フレームとエンジンの隙間26ミリ……どうやってISGドライブベルトを交換する?
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「マイルドハイブリッド〈ISGドライブベルト〉交換の知識」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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スズキのマイルドハイブリッドのISGベルトは、交換サイクルが早いっていうのは分かったけど……
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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しかも、そのベルト交換作業が大変なのです。
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なにが大変なの?
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オートサービスショーのKTCブースの展示は、エンジンを降ろした状態でベルトもよく見える(↓)から、すぐ外せそうなんだけど……
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実際は、軽自動車のエンジンルームだから狭い。車にエンジンが載っている状態だと、フレームとの隙間が26ミリしかないらしい。
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26ミリぃ!?
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その隙間で、エンジンの下から手を入れてベルト交換作業しろと言われましても……
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手も入らない。
どうしろって言うの? -
そこで、KTCが専用工具を開発しました。
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ベルト交換時には、クランクシャフトプーリーとオートテンショナーを回す作業が必要になりますが、それに特化した工具です。
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ずいぶん長いめがねレンチが付いてるね。
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全長410ミリの超ロングストレートめがねレンチに、アダプタとソケットを組み合わせることで、隙間に手を入れることなく作業できます。
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へー!
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普通のラチェットじゃフレームに当たって回せない隙間に、コレが入り込んでいきます。
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なんか面白そうね。
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それでは、ISGベルト交換作業のデモを見てみましょう。ベルト交換の勉強にもなります。
まず、ウォーターポンプドライブベルトを取り外す
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ISGドライブベルトを交換するには、まずその手前にかかっている「ウォータポンプドライブベルト」を外さないといけません。
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そういえば、重なってるもんね。
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で、このウォーターポンプドライブベルトを外すためには、クランクシャフトプーリーを回す必要がある。
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奥まった位置にあるけど……
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ここで、めがねレンチの19ミリ側を使って、付属の9.5sqドライブ・9.5sqソケットを接続した状態で、クランクシャフトプーリーを回す。
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手前のウォーターポンプドライブベルトは、この作業で外せます。
このベルトの脱着作業は、別売りのスズキ車用の特殊工具(リムーバーやインストーラ)も必要。
ISGドライブベルトの交換(脱着)方法
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そんでもって、ISGドライブベルトの取り外しは、オートテンショナーを回す必要があるんだけど……
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オートテンショナーってなに?
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カンタンに言えば自動的にベルトに張りを与えている部品ね。現代の車はオートテンショナーのおかげで、張り調整がいらないわけだけど……
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ふむふむ。
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マイルドハイブリッドのISGドライブベルトには、2つのオートテンショナーが使われています。
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動力が強くなったから、ダブルテンショナーになっているのね。
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2つで押さえて、ピンっと張ってるんだ。
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これを2つとも解除しないと、ISGドライブベルトは取れません。
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どうやるの?
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次はストレートめがねレンチをひっくり返しまして、21mm側を使って、ロアテンショナーを回します。
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ロアテンショナーをズラした状態で、付属のテンショナーホールドピンを差し込んで、テンショナーの位置を固定します。
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このホールドピンで、テンショナーの動きを止めるんだ。
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で、アッパーテンショナーも同じようにズラして、テンショナーホールドピンを差し込む。
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これでISGドライブベルトがフリーになったから、取り外しできます。
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どんな困難な作業かと思いきや、意外と……
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……意外とカンタンそうに見えるのは、専用工具を使っているから、です。
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……なるほどね。
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そもそも、テンショナーホールドピンもすごく長くなっているけど、これ、整備指示書だと普通の六角棒レンチを使うことになってます。
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六角棒レンチって短いよね。どうやってそこまで入れるのかな?
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……う~ん、私に聞かれましても。
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それでKTCのセットには、長いホールドピンが2本付いているんだ。
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2本付いているっていうのも、作業性を上げるためなのね。1本ずつでは大変だから。
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なるほどね。
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細かいことを言うと、このテンショナーホールドピン、ただ長いだけではないらしい。
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どういうこと?
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実際の作業では、アッパーテンショナーを動かしてホールドピンを差し込む場面では、穴がどこだかぜんぜん見えません。
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そりゃそうね。
エンジン下から入れてくるんだから。 -
でも、このテンショナーホールドピンを、クランクシャフトプーリーのセンターに合わせると……
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ピンの下端がちょうどフレームのツラに来た状態で、上端付近に差し込む穴がある……という絶妙な長さになっているのだ。
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すごい偶然!
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偶然ちゃうわ!!
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そこまで考えて、長さを決めているのか~。
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さらに「細さ」も絶妙。
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細さ?
それは穴に合わせた径なんじゃないの? -
それよりは意図的にちょっと細くしてあって、ガタがあるせいで差し込んだときにナナメになるのよ。
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なんか意味あるの、コレ?
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棒がナナメになることで手前に空間が生まれるから、ベルトが抜きやすいわけよ。分かる?
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ほえ~。
そこまで考えてあるのか。 -
こういった最新の知恵が詰まった専用工具を使えば、来たるISGドライブベルト大交換時代がきても、乗り切れるのです。
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