オートサービスショー2019・ルポ
ジャッキ専門メーカー〈マサダ製作所〉ブースで、油圧ジャッキの種類を学ぶ
油圧ジャッキにもいろいろ種類があるが、車のDIY用に買うとしたらおすすめはあるのか。また最近はコンプレッサーが安くなり、エアージャッキデビューも現実味を帯びてきたが、そのへんの事情はどうなのか。ジャッキ専門メーカーの老舗・マサダ製作所で聞いた。
マサダ製作所はジャッキ専門メーカーの老舗
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さて、オートサービスショー・ルポもこれが最後。
●レポーター:イルミちゃん
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プロ向けのイベントなだけあって、マニアックな話題が多かったよねぇ。カーショーのノリとは全然違うっていうか…。
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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そうね。
限りなくマニアック。 -
ふむ。
……で、最後のブースは? -
マサダジャッキです。
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ジャッキの専門メーカーか。
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会社名はマサダ製作所。1946年創業の、非常に歴史のあるジャッキメーカーなのです。
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え~っと、今は2019年だから……73年前。今年で74年目!
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そして! マサダジャッキの一番の特長は、メイドインジャパンであること。
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最近は国内メーカーであっても、海外で製造しているものが多いもんね。
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そう。そこいくとマサダジャッキは生粋のメイドインジャパンだから、国内はもちろん、海外からの引き合いも強いらしい。
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なるほど、なるほど。
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そんなマサダジャッキの中から、DIYユーザーにもオススメの油圧ジャッキを紹介していきたいと思います。
車のDIY向けのジャッキとしてオーソドックスなのはシザースジャッキ
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まず車のDIYユーザーからの支持が高いのが、シザースジャッキ。特に新製品ではないけれど、おすすめ。
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おさらいですが、パンタグラフジャッキに油圧機能を付けたのが、シザースジャッキね。
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ふむふむ。
車載ジャッキの進化版みたいなやつね。 -
車載ジャッキだと手でクルクル回して持ち上げるので大変だけど、油圧のシザースジャッキなら、上げるのも下げるのも、早いしラクです。
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ナルホド。
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マサダジャッキ製シザースジャッキの特長としては、ジャッキポイントに当たる部分がアルミ製になっていること。
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アルミは柔らかいので、車体側のジャッキポイントを傷付けにくい、という配慮ですね。
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ジャッキポイントを潰す問題は、けっこうリアルな話だから……ね。
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シザースジャッキはコンパクトでジャマにもならないし、タイヤ交換などの一般作業向けには、一番オススメのジャッキということになります。
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でもさ、足回りをいじる人になると、両輪をいっぺんに持ち上げるガレージジャッキとウマが必要になるよね?
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もちろん。マサダジャッキは、ガレージジャッキのラインナップも豊富です。
マサダジャッキの油圧パンタジャッキ
ジャッキポイントにかませる部分がアルミ
エアーと油圧を組み合わせたエアーサービスジャッキの人気が高まっている
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ところでガレージジャッキの売れ筋というか主流は、エアーサービスジャッキになっているもよう。
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エアーサービスジャッキってなに?
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コンプレッサーとつないで、エアーポンプを動かして、油圧機能を働かせるジャッキのことよ。
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持ち上げる力は「油圧」には違いないけれど、油圧ポンプを動かしているのはエアーってことね。
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プロの人が使うようなジャッキのことね。
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そうなんだけど、最近は一般ユーザーでもエアーサービスジャッキを購入する人が増えているそうな。
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へー。
でも、コンプレッサーが必要でしょう? -
そのコンプレッサーが安く買えるようになったし、頻度がそれほどでもないなら、コンパクトなコンプレッサーでも使えるので。
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……ホウ。
なんか一気にプロっぽくなれそうな。 -
ちなみにエアーサービスジャッキの利点は、ラクなことだけじゃないのよ。
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と言うと?
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トヨタ車などを例にすると、フロントバンパー側からジャッキポイントまでの距離が、けっこうある車種が多いんだけど……
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ジャッキポイントが奥のほうにある場合、手動のガレージジャッキだとレバーを漕ぐのが大変だったりする。
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上下させていて、バンパーにゴンとか当てそう……。
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そこいくと、エアー式はプッシュボタンひとつ。ジャッキが入りさえすれば、持ち上がる。
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それと、持ち上げている過程でもジャッキポイントに集中していられるから、結果的に安全性も高まります。
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ひっぱんに足回りをいじるような人なら、導入を考えてもいいのかもね。
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なお、組み合わせるコンプレッサーの容量とかは特に指定はないそうです。
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そうなの?
自由ってこと? -
例えばコンプレッサーの出力・容量が小さいと、ジャッキアップに時間がかかるけど、使用頻度がそれほどでもなければ、問題ないそうです。
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じゃあ、ひとまず小さいコンプレッサーと組み合わせて「エアージャッキデビュー」でもいいんだ。
車ではあまり使われないが、油圧ジャッキがパワフル
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車ではあまり使われないけど、こんな(↓)油圧ジャッキ(オイルジャッキ)もあります。
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なんかポットみたいな形したジャッキね。
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実はこれが油圧ジャッキの基本形なのだ。
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ほう。
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小さいシリンダーと大きいシリンダーの組み合わせでできていて……
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ふむふむ。
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小さいシリンダーのピストンを押すと、押されたオイルが大きいシリンダーのピストンを動かす。それで、重いモノでも持ち上がる……というパスカルの原理ね。
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……テコの原理しか知らないけど。
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あ。そのテコの原理も組み合わさっているのが、油圧ジャッキの仕組みなのよ。
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……なんだそうです。
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なんとなく分かった気がするわ。なんとなく、ね。
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この2つの原理を組み合わせたパワーがすごくて! 持ち上がる重量がケタ違い。
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10トンも持ち上げられるのか!
こんなポットみたいのが。 -
マサダジャッキのラインナップには、30トン、50トン、100トンまであるらしいよ。
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……100トンって、なに持ち上げる気なの?
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橋をかけるときに、最終的に橋梁を水平にするのに、こういう油圧ジャッキで上げ下げして微調整するそうな。
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……は、橋の作り方の解説ですか。
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まあ、主に建築業界向けで、車ではあまり使われないんだけどね。
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でもパワーはあるのにねぇ。なんで使わないんだろ?
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車の場合は、高く上げることが重視されるでしょう? だからこういう油圧ジャッキをベースに、シザースジャッキなどが生み出されたわけですね。
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な~るほど。
……その隣にある、爪付ジャッキっていうのはなに? -
これはツメの部分を上げ下げできる、油圧ジャッキの派生型ね。ツメが付いているから爪付ジャッキ。
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なにに使うんだろう?
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爪付ジャッキは災害時などに活躍するの。がれきを持ち上げて救出に使ったりするのだ。
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あ~、そのためのツメか。
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防災グッズのひとつとして、市町村も保有していたりするそうな。
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ジャッキって思ったよりいろんな種類があるんだなァ。マサダさんの歴史の重みを感じるわ。
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後半は車とはあまり関係なかったけど、DIYユーザーの人は何をどう応用するか分からないから、一通りの油圧ジャッキの種類を解説しておきました。
✔ 長い操作棒を付けて、シリンダーを動かすところは、「テコの原理」 小さいシリンダーの動きを、大きいシリンダーの動きに変えるところは「パスカルの原理」
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