フォグランプのカットラインやグレア光(上方散乱光)に関しての誤解と、正しい知識
フォグランプのLED化で、カットラインやグレア光(上方散乱光)を気にする必要はどれくらいあるのか? ヘッドライト(ロービーム車検)とは違って、車検時にチェックされる項目ではないので、「フォグランプのカットラインや配光」の重要性については誤解も多い。IPFにちょっと深堀り知識を教わった。
フォグランプには本来、配光やカットラインについての厳格な基準がある
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「迷惑フォグランプにならないために必要な〈配光の知識〉」の続き。
●DIYラボ別館:ユキマちゃん
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この記事は、前回に続きまして、先日〈動画部〉が公開したフォグランプ動画に関しての補足記事です。
●DIYラボ 本館:イルミちゃん
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実は上の動画のコメントなどを拝見していて、私なりに思ったことがありまして……今日はその話をしたいと思います。
●アドバイザー:IPF 堀越研究員
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ほう……?
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堀越研究員の言いたいこと? IPFは迷惑フォグじゃないぞ~、とか?
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それは分かってる。
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まずグレア光(上方散乱光)やカットオフラインなどに関して、アフターパーツメーカーの自主規制と思っている方も多いように思います。
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ふむ。IPFが特別細かいと思っている人は多そう…。
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まあ、フォグランプは車検のときにカットラインとか配光までチェックされるものではないし?
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保安基準では「他の交通の妨げにならないこと」っていう抽象的なルールになっていますね。
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確かに自動車の保安基準 審査事務規程……いわゆる車検における前部霧灯(フォグランプ)の配光に関わる規定は「他の交通の妨げにならないこと」のみなのですが……
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……が?
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それ以前に、大前提として自動車メーカーが製造販売する車の「型式認証」においては、フォグランプにも厳格な基準がありますよ。
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なんのこと?
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「継続車検」で問われるルールだけ見ると緩めに見えるけれど、本来自動車メーカーが満たすべき要件は厳しいってことですね。
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そうです。フォグランプの配光についても「UN(ECE)規則」、いわゆるEマーク認証の、厳格な基準があるんですよ。
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なんか難しいこと言いだしたけど、ユーエヌとかイーシーイーの規則ってなによ?
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自動車の技術基準に関する、国際的なルール(協定)のことです。
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これがあるので、自動車に取り付けるランプ類も、「UN(ECE)規則」を満たして、Eマークの認証を受ける必要があるんです。
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純正のランプにはどこかに必ずEマークが付いています。
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現在販売されている新車の自動車メーカー純正フォグランプ(ハロゲン/LED)は、「UN/ECE R149 F3フォグランプ」の規定を準拠した灯体でないと、型式認証・車両登録 を受けられません。
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フォグランプの厳格な規定を順守しないといけない。
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認証試験項目にはヘッドランプと同じくゾーンによる明るさの規定や、水平カットオフラインの規定もあります。
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フォグランプには本来、配光の細かな基準もあるってことか。
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そうなんです。フォグランプに関する規定が緩いというのは、本来のルールから言うと誤解です。
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なるほど。
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IPFのフォグランプ灯体もこれに準拠して、Eマークの認証を受けています。
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IPFのフォグランプは純正品としても採用されていますから、当然ですね。
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はい。当社を含む自動車メーカー純正のハロゲン/LEDフォグランプ(例:小糸製作所・Valeo・スタンレー電気など)は、「UN(ECE)認証」を受けているため、グレア光(上方散乱光)の無い適切な配光が出ます。
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純正フォグランプの配光やカットラインは、国際的なルールにのっとっていたんだね。
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そのハロゲン灯体にLEDバルブを入れ替えるということなので、適切にハロゲンのフィラメントやLEDの発光点の配置・明るさが調整されていれば、迷惑な爆光フォグにはなりません。
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社外LEDバルブでLED化したフォグランプがすべて迷惑な爆光フォグランプではないよ~、ということです。
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しかし、そこはまさに「モノによる」という話。
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そうなのです。そのへんは〈動画部〉でもお伝えしている通りです。
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でもさ、純正フォグランプのハロゲンバルブを勝手にLEDバルブに交換している時点で、Eマークのルールには準拠していないことにならないかね?
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む。
言われてみれば…… -
車両登録後の継続車検の場合は「UN(ECE)認証」を受けているか否かは関係なく、日本の「車検」規定が採用されるので、審査規程は緩くなっているわけです。後付けの製品でも「審査規程に準拠すればOK」となります。
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そういうことか。
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だから車検でカットラインや配光についてチェックされるわけではないが……
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とはいえ、おおもとのフォグランプのルールは、配光やカットラインについての厳しい基準があることは知っておいて頂ければと思います。
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フォグランプの法規が最初から緩いわけではありませんよと。
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ですのでEマークに準拠した灯体に、適切なバルブを入れれば適切な配光が出るはず……ということになります。
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適切なバルブを入れれば……ね。
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つまりグレア光を飛ばす迷惑フォグランプが生まれる原因は、適切ではないバルブに交換しているから、ってことですね。
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あるいは灯体側に原因がある場合もあるでしょうね。
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なんでよ? そこはEマーク付きなんでしょう?
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すべてのフォグランプ灯体がEマーク付きではありません。アフター市場メインの後付けフォグランプは、Eマークの無いものもあります。
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そうか。純正以外のフォグランプを取り付けているとしたら……事情はバラバラだ。
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フォグランプの配光ではない灯体を取り付けている例もあるでしょうし……あるいはEマークがあったとしても、安価な粗悪品では偽Eマークを刻印しているようなケースもありますね。
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偽(ニセ)Eマークなんてのもあるのか……。
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フォグランプを灯体ごと交換したり後付けしたりする場合は、バルブだけ交換するのとは違って「灯体側の品質」にも注意が必要ということです。
ひとくちメモ
自動車は国をまたいで販売されるものなので、各国独自の法規・基準だけでは国によってルールも認証方法もバラバラになり、自動車メーカーも国ごとに仕様を変更しないといけなくなってしまう。
そのため国際的に統一されたルール(法規)が生まれ、国連欧州委員会(UN/ECE)の協定に、昔から日本も参加している。
「UN」はもともとUnited Nations(国際連合)、「ECE」はEconomic Comission for Europe(欧州経済委員会)の略称。
※動画「LEDフォグランプのメリット&デメリット」より。※左のH8はIPF製の灯体。
IPF製LEDフォグバルブに交換後の配光とカットライン
>>> 次回に続く
DIY Laboアドバイザー:堀越秀樹
バルブメーカーIPF企画本部に所属、LEDバルブやハロゲンバルブなどの交換型バルブを統括している。語学が堪能で海外とのやり取りもこなす有能社員だが、休みの日に限らず、子育てや犬の散歩など家事もしっかりとやるタイプ。そしてかなりの愛妻家。
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