LEDヘッドライトバルブの性能はルーメン値では計れない…!
車の灯火類(ランプ)について勉強しながら、カスタムで失敗しないための知識を身につけるための新連載。〈動画〉と〈記事〉の両方で徹底的に深掘り解説していきます。
〈車の灯火類ラボ〉プロジェクトスタート!
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先日、〈動画部〉がLEDヘッドライトバルブに関する動画(↓)を公開しましたが……
●DIYラボ 本館:イルミちゃん
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これと連携して、DIYラボ〈本館〉のほうでも新たに連載を立ち上げます。その名も【車の灯火類ラボ】。
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トウカルイ・ラボ?
●DIYラボ別館:ユキマちゃん
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灯火類っていうのは、車のランプのことよ?
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…し、知ってるわよ。
バカにすんな! -
車の灯火類にはヘッドライト・フォグランプ・ウインカー・バックランプなど、いろいろありますが……
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フムフム。
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それらの灯火類(ランプ類)のカスタムには、わかっておきたい独自の注意点があります。
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まあねぇ。ヘンないじり方すると車検にも通らないし、対向車にも迷惑かけるし?
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非常に気になるポイントだよね。
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そういえば〈別館〉の社用車、ヘッドライトバルブをLEDに換えてから、よくパッシングされるようになった。なんでだろう?
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ここでそういうこと言うの止めてくれる? 総務の私を通さず勝手にヘンなもの買うからそんなことに……
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やっぱり爆光LEDでバルブを自作したのがマズかったのかな。
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ハイ! ということで車のランプをいじる人には絶対に知っておいてほしい知識を、深掘り解説していくコーナーがスタートします。
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なるほど……つまり、いよいよ〈動画部〉つぶしの動きに出ようって魂胆ね。
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違う! 〈動画部〉と連携して……って言ってるでしょうがッ。
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……チッ。
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ここであらためて本コーナーの講師・車の灯火類のプロを紹介します。
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バルブ博士といえば……IPFの市川研究員よね。
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まさか、市川研究員……なにやらかしたの?
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おい……。
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市川研究員も元気でやってますよ。……ただ、現在IPFのバルブ関連は私の担当なので、今回のお話も私が受けることになったんです。
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出世したのね市川研究員も(な〜んだ)。
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まあ、そんなところです。
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堀越研究員は、現在のIPFにおいて交換用バルブを担当しているエースです。
はじめまして。IPFの堀越です
アドバイザー:IPF 堀越研究員
LEDヘッドライトの明るさ(ルーメン)と配光性能は両立が難しい?
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まず今回は〈動画部〉が問題にしていたLEDヘッドライトバルブのルーメンについてです。
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ルーメンはバルブの明るさの数値ではあるけれど……
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ルーメン値が高い=路面を明るく照らせるわけではない、っていう話ね。
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それはその通りですね。実際のところIPFのバルブ研究開発においても、ルーメン値をどんどん高くするというよりは、バランスを考えて決めています。
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参考までにIPFのLEDヘッドライトバルブの中ではフラッグシップモデルに相当する“Gシリーズ”のルーメン値は、H4タイプでロービーム時に4000ルーメン・ハイビーム時で6000ルーメンです。
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なお純正のH4ハロゲンバルブが2000ルーメン前後。それを考えたら、かなり明るいのですが……
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でも今どきは、ウン万ルーメンみたいなLEDヘッドライトバルブが山ほどあるよね?
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そうなんだよね。業界を見るとルーメン・インフレが起こっています。
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ルーメン値だけで見ると、IPFは控えめに抑えているようにも見えるんだが。
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しかし実際の明るさには自信があります。IPFのLEDヘッドライトバルブを使っているユーザーさんからは「明るい!」という声を頂いておりますよ。
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ちなみに純正ハロゲンバルブの路面照射と比べると、違いは一目瞭然です。
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確かに明るい!
夜、走りやすくなる~。 -
ようするに実際の路面の明るさは、ルーメン値では分からない。これがまさに〈動画部〉が主張したかったところと重なるんですが……
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IPFのLEDヘッドライトバルブでは「光の量」(ルーメン)だけではなく、それを路面に届けるコントロール(配光性能)のほうを重視していますので。
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そこなんだけど、ちょっと気になる疑問があるのよね。
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どうぞ。
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IPFのバルブの配光性能の高さに定評があるっていうのは分かるんだが……
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だが……
なによ? -
その配光性能の高さがあるなら、もっとルーメン値の高いLEDに載せ替えるだけで、パワー競争だってできそうじゃない?
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ふむ。……確かに。
そこはどうなんだろう? -
もちろん検討はしてきましたが、いろいろなバランスを考えると、現状はこれ以上ルーメン値を上げるのは得策ではないと考えているんですよ。
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IPFがルーメン競争に消極的な姿勢を取る理由が気になるわね。
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そもそもLEDヘッドライトバルブを開発する上では、「配光性能」と「明るさ」は二律背反とも言える要素です。
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ニリツハイハン?
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両立させることが難しい、ってことですね。
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そうです。
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「配光性能」をしっかりさせた前提で、「明るさ」を上げていけばいいんじゃないの?
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そう単純ではありません。ルーメン値を上げていく一番の問題点は〈熱〉です。
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明るくするほど熱を持つ。LEDの宿命ですね。
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放熱が追いつかなければ寿命も短くなるし、LEDが熱を持つことによってルーメン値もどんどん下がっていきます。
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え? ルーメンが下がる……って暗くなるってこと???
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はい。点灯した直後が100%のルーメン値だとして、放熱が追いつかないバルブだと10分後・20分後・30分後…と時間が経過すると、どんどんルーメン値が下がっていってしまいます。
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ええッ!!!
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このルーメン暴落問題については〈動画部〉のほうでも今後詳しく取り上げる予定ですのでお楽しみに。
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ぜんぜん楽しくないッ。つまりIPFのLEDヘッドライトが明るいのも「点灯直後だけ」なんじゃないの?
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だいぶ疑心暗鬼になってるわね…。
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IPFが重視しているのは「光束維持率」です。このコトバは「ルーメン」とセットで、ぜひ知って頂きたい。
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コウソク……イジリツ?
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ルーメンのことを「全光束」と言いますが、時間が経過してもそれがどの程度キープできているかを示す数値が「光束維持率」です。
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つまり……時間が経過してもルーメン値の高さをキープできる。
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そういうことです。そのためには放熱機構のほうが重要になってきます。
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放熱性能を上げれば、明るさも上げられるのね。
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ここで単純に「放熱性」だけを重視するなら、ボディも厚型構造のほうが有利と言えますが……
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そりゃあ、薄型より厚型設計のほうが熱は逃がせますね。
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だったらボディを分厚くしてLEDのパワーも上げれば何の問題も……
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しかし「配光性能」を重視するなら薄型設計のほうが有利です。
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なぬ?
そうなの??? -
それがつまり「二律背反」だ。
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パワーばかりを上げていけない事情がここにあります。
全方向に出ている光の合計=ルーメン
純正ハロゲンバルブの路面照射
IPF LEDヘッドライトバルブ Gシリーズ(H4)の路面照射
DIY Laboアドバイザー:堀越秀樹
バルブメーカーIPF企画本部に所属、LEDバルブやハロゲンバルブなどの交換型バルブを統括している。語学が堪能で海外とのやり取りもこなす有能社員だが、休みの日に限らず、子育てや犬の散歩など家事もしっかりとやるタイプ。そしてかなりの愛妻家。