社外LEDヘッドライトの熱ダレ問題。ルーメン値だけ高くても意味がない
明るいLEDヘッドライトにしたいからと「ルーメン値の高さ」だけで製品を選ぶのはリスキー。そのルーメン値は点灯直後のスペックであり、明るいのは最初だけ…ということがあり得るのだ。
LEDヘッドライトは「ルーメン値」が維持できるかどうかが重要
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「LEDヘッドライトバルブの配光性能が低いとロービーム車検にも落ちる!?」の続き。
●DIYラボ別館:ユキマちゃん
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先日、〈動画部〉がLEDヘッドライトバルブの「熱ダレ問題」に関する動画を公開(↓)しました。
●DIYラボ 本館:イルミちゃん
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「ルーメン暴落問題」と言ってもいいような問題よね。
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特に光束維持率(こうそくいじりつ)の低いLEDヘッドライトバルブは、短時間に半分近いルーメン値まで下がる例もあるので暴落に等しいかも。
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そもそもルーメン値だけでなく、光束維持率もセットで見ないと、意味ないよね?
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しかし光束維持率は、一般的にLEDバルブメーカーは公開しておりませんので。そこはブラックボックスなんだよね。
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点灯直後のルーメン値だけ公開して、「このバルブは明るい」っていうのはズルくないか?
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私に言われても……。
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だったら光束維持率の測り方だけでも知りたいんだけど? 壁ドンで分かるのかな?
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光束維持率を測ろうと思ったら、積分球が必要ですね。
●アドバイザー:IPF 堀越研究員
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積分球はルーメン値を測る機械では?
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積分球で、ある程度の時間をかけて測定し続けるんですよ。そうすると熱でだんだんルーメン値が下がっていくのが分かります。
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なおIPFでは、積分球でLEDバルブを測定するときは30分間測定しています。
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ちなみにIPFのフラッグシップモデルであるGシリーズのH4バルブを測定したところ、30分後でも90%超を維持していました。
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90%がどうスゴイのかも、分からない人がほとんどだと思うけど…
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一般的なLEDヘッドライトバルブと比べたら、90%の光束維持率は驚異的に高いです。
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ちなみに点灯30分後に光束維持率70%前後なのが、よくある結果でした。
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ふむ。名前の知れたメーカーでも、光束維持率はだいたいその位なのね。
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中には80%を超えてくるモノもあって、そのへんから優秀クラスという印象。
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そう考えたら90%は確かに驚異的ね。
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IPFのLEDヘッドライトバルブは「配光性能」と「光束維持率」にこだわって作っていますから。
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光束維持率の高さの秘密が、放熱性能の高さにあることは〈動画部〉でも触れていましたが……IPFは独自の放熱機構を持っています。
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ポイントとしてLEDチップを搭載している基板には2枚の銅基板を使っています。
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なんで銅なの?
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一般的なアルミ基板に比べて熱伝導率が高いからよ。
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じゃあ、なんでみんな銅基板を使わないのよ?
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値段が高いからよ……。
銅は高価なの。 -
しかしIPFでは長い銅基板を使うことで、LEDが発した熱をそのまま後部のヒートシンクに運んでいます。
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銅基板を使うことで、薄型設計にしつつ放熱性能を高めることができるのもポイントです。
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LED基板の薄さが、配光性能を上げることにつながる……という前回の話ですね。
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そうですね。
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それはいいんだけど……コスト的にはあり得ない作りなんじゃないのコレ?
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……。
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「光束維持率」が高くなっても「利益率」が低くなったらどうなのかね?
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アンタ、どの立ち位置でものを言ってるのよ。モノ言う株主じゃあるまいし。
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IPFはモノ作りに妥協しない会社だからできた、というのはあるかもしれません。
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あ。技術部のコダワリが許される社風だと聞いたことあります。以前に市川研究員が言ってた。
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ユーザーにとっては素晴らしい社風ねぇ。
積分球
IPF G341HLB デュアルCPS分解図
初代モデルの基板と、現行モデルの基板の比較。約460%ほど、銅基板の面積が拡大している。
コンパクトモデルでも光束維持率90%クラスの秘密
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銅基板で後方の大型のヒートシンクへと運んだ熱は、冷却ファンで冷やします。
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ヒートシンクの中にはファンまで入っているのか。だからお尻が大きいのね。
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IPFのLEDヘッドライトは特にお尻が大きいことで有名ですが、そこには事情があるわけです。
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しかしバルブが大型化するデメリットもあるよね。
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そうですね。ヘッドライト裏にスペースが無い車だと取り付けしにくかったり、そもそも適合しないケースも出てきます。
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そこで後から登場してきたのが、コンパクトなファンレスモデル。
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こちらはヒートシンクが小型化され、冷却ファンも使われていません。
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だとすると……自慢の光束維持率も下がってしまうよね。
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ところが実際に測定してみると、IPFのGシリーズはコンパクトモデルでも光束維持率90%クラスなんだよね。
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それってヘンじゃない? 放熱性能は下がっているはずでしょ?
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そうですね。コンパクトなほうが放熱性能が下がるのは事実です。なので、LEDのパワーを抑えています。
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フラッグシップモデルではハイビーム時6000ルーメン╱ロービーム時4000ルーメンなのが、コンパクトモデルではそれぞれ5000ルーメン╱3000ルーメンに抑えられています。
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……光束維持率が悪くなる位なら、ルーメン値を下げる設計なんだ。
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そうです。熱ダレして走行中に暗くなってしまったらルーメン値が高くても意味がありませんので。
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でもさぁ……スペックとして表に出るのは「ルーメン値」のほうでしょ?
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まあ、そうですが。
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ユーザー側からすると「光束維持率」は分からないんだから「ルーメン値」だけが目につくわけよねぇ。
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まあ、そういう面はありますね…。
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「光束維持率重視」のスタンスって、営利企業としては損しているような……。どうなっているのかね。
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だからアンタはどういう立ち位置なのよ。
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私はIPFの心配をしているのよ。正直過ぎるがゆえに損をしているように見えるっていうか……。
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しかし、モノの良さっていうのはけっきょくのところ、実際に使って頂いたユーザーの方には分かりますからね。
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ふむ。
それはそうだ。 -
「配光性能」と「光束維持率」の重要度が、もっともっと世の中に広まるといいですよねぇ。
>>> 次回に続く
DIY Laboアドバイザー:堀越秀樹
バルブメーカーIPF企画本部に所属、LEDバルブやハロゲンバルブなどの交換型バルブを統括している。語学が堪能で海外とのやり取りもこなす有能社員だが、休みの日に限らず、子育てや犬の散歩など家事もしっかりとやるタイプ。そしてかなりの愛妻家。