年末スペシャル2021
球屋・森田の〈ポジティブな悲観シナリオ〉〜車のカスタム業界はどうなるのか?(後編)
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DIYラボの年末スペシャル2021は、球屋・森田研究員の「重たい話╱番外編」。世の中、コロナ禍で不景気な話が多いが、球屋的にはすでに「最悪期は脱した」という。その手応えに至るまでに、どう考えてどう行動したのかを聞く。
後付けだったアイテムの純正採用が進み、アフターパーツマーケットは苦境に立たされて…
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「球屋・森田の〈ポジティブな悲観シナリオ〉~車のカスタム業界はどうなるのか?~」の続き。
●DIYラボ別館:ユキマちゃん
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コロナ禍を乗り越えつつある球屋が感じている危機感は、オミクロンなどではなく……
●DIYラボ本館:イルミちゃん
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「純正」だそうですが、それはどういうことなのか?
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アフターパーツマーケットの現状としては、「後付けするものがどんどん純正に取られていく」という流れが加速しています。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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ウーム……。
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街中でも、純正エアロ装着車が増えたもんねー。純正ホイールもカッコ良くなったし、大口径にもなっているし。
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電装の面でも、ワンタッチウインカーやウェルカムランプなど、どんどん純正採用が進んでいますよね。もっとも、新車を買う人にとってはいいことですけど。
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そういう流れは、球屋が得意にしているLED加工の分野でも同じ?
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いっしょですね。どう考えても、絶対に厳しくなっていくでしょう。
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光モノも、最近は純正で全部載せに等しい車種が出てきていますよね~。
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そうそう。
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このままでは職を失うわね。どうしよう???
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ということを先に考え、それこそ景気の良いときに準備を始めておく。それがショップの経営において、大切だと思います。
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では、森田流の経営学に触れてみよう。
シーケンシャルウインカーブームの中、考えていたのは「次になにができるか?」
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自分達の仕事を作るという意味で僕が重要視しているのは、とにかく新型車に触れることです。
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球屋がデモカーを頻繁に購入するのはまさに研究目的。
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少し前の話をすると、シーケンシャルウインカーがブームになっている時期がありましたよね。
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フムフム。
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球屋でも「業務の8割がシーケンシャルウインカー加工依頼」だった時期が、2~3年くらい続きました。
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シーケンシャル屋さん。
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でも、そこでシーケンシャル屋さんになってもご飯は食べ続けていけない。
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その時だけよくてもね。最近はもう、シーケンシャルウインカーが純正採用されていたりするし……
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あるいは、違う見せ方になっていたりもしますね。
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こうなる流れは、シーケンシャルウインカーがブームになっていたときから予想できていたので、当時、球屋はデモカーとしてレクサスRX(前期)を買ったんです。
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なんでレクサスRX?
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早々に前後シーケンシャルウインカーを採用した車だったから、ですね。
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どういうこと???
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純正でシーケンシャルウインカーが採用されるのが当たり前になったときに、球屋に何ができるのか。それを先取りで知るのに都合のいい車種だったからです。
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なんというアマノジャク。
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普通に考えたら「シーケンシャルウインカー化したらウケそうな車」を選んで商売につなげるでしょうが……
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そこは素直にブームには乗れない性格でして、ブームになればなるほど「これが無くなったらどうなるの?」と、逆に危機感を持ってしまうタイプなんですよ。
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ちなみに、その時にレクサスRXで開発されたメニューが、今も続く人気メニューの「アンビエントライトの光量アップ」であったり「アンビエントライトの後付け」だったりするんですよね。
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そして、純正で全部明るくなったら僕らの仕事ってどこにあるの? みたいのが今の考えですね。
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……アハハ。
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そういうのって、ずっと考えていないといけないことだと思うんですよ。
4連プロジェクター・シーケンシャルウインカーが採用されたカローラクロス。
スモールやデイライトの白点灯が、そのままウインカー点滅に切り替わる方式も今風。
球屋・森田式の考えでは「危機感は標準装備」
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森田研究員っていつも悲観シナリオをベースに考えているようだけど、楽観シナリオはないの?
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アンタ、昨日は「(人の不幸は蜜の味だから)悲観的シナリオはないの?」って聞いていたよね。
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……ないですね。というか、楽観シナリオなんて必要ないから考えたこともないです。
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ウーム。明るい未来を妄想するのも大切なんでは?
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楽観シナリオは、想定しておくべきこと、ではないので。
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ホホウ。
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結果的に景気が良くなって「良かったラッキー♪」の展開は、特に事前の準備には関係ない話ですよね。
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基本は悲観シナリオで、それベースに「どうショップを運営していくか」を組み立てていくと。
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そうです。悲観シナリオがないと、組み立てられない、とも言えます。
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その生き方、疲れない?
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いや、べつに、悲観して生きているわけじゃないですからね。会社を経営する立場からは「危機感は標準装備で持っていないといけない」と思うだけで。
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常に新しい車を買ってバラしているのは、そういう危機感もあってのことだったのか。楽しそうだから、てっきり遊んでいるのかと……
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そんなわけないでしょ。
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常に新しい車を追いかけていれば、なにかできることは見つかる、と思っています。車を触っているのが楽しいから触っている、という感覚はとても重要ですね。
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純正の制御が変わって、今までの手法が通用しなくなったときって一般的には困るものですが、エラーが出ると嬉しそうなんですよね。
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まさにヘンタイ。研究員らしいとも言えるが。
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そういう意味では来年の楽しみはなんといってもレクサスNXです。
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それはなぜ?
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日本車として初めてRGB LEDを積んでいるっていうのも含めて、電装の制御的にも大きく変わっているんじゃないかな~という期待を持っています。
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ますますいじりにくくなりそうな予感がしますが……
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車のカスタムショップの経営は、ドMな性格のほうが向いているようだ。
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全部載せの車が当たり前になったときに、僕らが何をしてご飯を食べているのかっていうのは、今の僕には分からないですけど、アンテナを張り続けていたら常に何かが引っかかると思っています。
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将来を悲観するより、アンテナをピーンと張っていきましょう。
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うん。まだまだやっていけそうな気がしてきたよ。
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ユキマちゃんは楽観的過ぎるのよ? 都合良く解釈しないようにね。