カスタムする人には関係ある、ヤリスクロスのヘッドライト内部事情(後編)
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ヘッドライトカスタムの難易度は、いろいろな面でどんどん上がっているというのに、ヤリスクロスのヘッドライトは、さらに一段難しさを増した……という重たい話。しかし「そう言われると逆に燃える」マニアックな人には、興味深いヘッドライト最新事情。
ヤリスクロスのヘッドライトを加工しようとする場合の問題点
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「カスタムする人には関係ある、ヤリスクロスのヘッドライト内部事情」の続き。どうやら、ヤリスクロスでまた一段と「カスタムの敷居」を上げられたようです。
●DIYラボ:イルミちゃん
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今後はこういう制御方法がスタンダードになるのか、海外戦略車だから普通のトヨタ車とは違うのか、テスト的にやっているのか、そこは分かりませんけどね。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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問題は、今回のヤリスクロスのような構造のヘッドライトになっても、カスタムは続けられるのか?
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加工する側からすると、ヤリスクロスが今までのトヨタ車と一番違うのは、純正の回路を利用することができないし、なくすこともできないという点です。
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ふむ。
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例えばの話ですけど、スモールランプ部を、デイライト点灯させたいとするじゃないですか。
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人気定番カスタムのひとつですね。
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そういう場合に「純正スモールランプの回路に対して、IG電源を流す」というようなやり方はもうできません。
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基板(回路)にアクセスできないからね。
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前回も言った通り、コンピューターと各ランプのLEDが直結されている状況なので、コンピューターがスモールのタイミングで電気を流す……という回路に対して、どうこうすることは基本的にはできません(できないと思ったほうがいい)
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では、どうやって昼間も光らせるの?
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まったく別ラインで、もうひとつ純正LEDの回路を作るしかないですね。
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後付けLEDだけではなく、純正LEDを違うタイミングで光らせるための電源も、ヘッドライト外から持ってくるということか。
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そうなります。IG電源もイルミ電源でも、車内ではまったく今まで通り取れますから、それをヘッドライト内まで持ち込みます。
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純正回路とは別ラインで回路を作るのなら、この問題は解決する!
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……いや、そう単純ではないですよ。ヤリスクロスのヘッドライトの構造だと、純正回路がまったく見られない、という問題があるので。
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もう純正回路には頼らないんだから、そこはもう、どうでもいいっていう話ではなくて?
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それはちょっと違いますね。
ヤリスクロスの場合、ヘッドライトのラインは夜しか光らない。
ヤリスクロスのような構造のヘッドライトは、どうやってカスタムするのか?
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ブラックボックスであるコンピューターの中に、純正LEDの基板が全部隠されてしまった。それはつまり「どういう回路で、純正LEDが光っていたかも分からない」ということです。
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それ、今さら知る必要ありますかね?
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だって、この状況では、純正LEDにどこまでの電流を流していいのかさえ、分からないので。
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そういう意味か。
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抵抗で電流制限するにしても「どのくらいの抵抗値で、どのくらいの電流を流してよいのか?」「そもそも12V駆動なのか?」という点も含めて、何も分かりません。
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なるほどね……。
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そこでまずは、純正で使われているLEDのスペックを予測して「この位の回路で動かせるのではないか?」というのを試します。純正LEDにつながる純正の回路をいったん外して、純正LEDだけの状態にした上で。
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ほえぇ。
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光らせてみて、仮に純正状態より明るくなってしまったら、明らかにオーバードライブなのでダメです。
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それだと純正LEDが切れるリスクが高いってことね。
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でも単に純正と同じ明るさになればその回路でOKかというと、そう単純でもなくて……
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フムフム。
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最近の純正LEDは、ほとんどがパルス制御(※高速点滅)されているんですね。電流値を絞るより、パルス制御するほうがLEDに対する負荷が小さくなるから。
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純正はそうやって熱のコントロールをしていたりもするのかな。
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ということは、後付け回路で純正LEDを光らせる場合、純正状態よりちょっと暗いくらいで、LEDには同様の負荷がかかっていることになる。
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純正回路より暗く光らせる位で、ちょうどいいってことか。
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そのへんを考慮しながら、純正LEDに対して、僕らが別に作った回路でアクセスして光らせてみる。発熱具合なども見ながら、試行錯誤していくわけですね。
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新型車のヘッドライト加工って、そんなシビアなことをやっていたのかー。
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しかも、最初は手探りですから、ヘタしたら純正LEDが飛ぶような実験です。
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相手の正体が分からないまま、電気流すんだもんね。
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球屋がデモカーを購入するのは、まさにこのような実験ができるからです。店のデモカーなら、壊れるかも知れないことでも実験はできるので。
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純正LEDが光るタイミングを変えるだけでも、こんなにいろいろ大変になる時代がくるとは……。
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最近の車のヘッドライトを触るのは、昔のようにはいきません。ヤリスクロスではもう一段、いじりにくくなった、というところです。
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もうヘッドライトをいじる時代じゃないのかな……という気もしますけど。
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しかし、いっぽうで、ヤリスクロスってひさびさにヘッドライト加工しがいのある車でしたよ。
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はい?
どういうこと? -
今まで述べてきたような電気的なことは、新しい方策を考えればクリアできるから、まだいいんですよ。
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……はあ。
前向きだなぁ。さすがドM。 -
それよりも、純正ヘッドライトのデザインが完成されすぎていると、デザイン面からいじる余地がない。こちらのほうが、加工屋の出番がなくなる話。
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ふむ。ヤリスクロスのヘッドライトには、デザイン面からいじる余地があるようですね。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。最先端かつデザイン性の高いライト加工技の探求者にして、アクリルづかいの若き老練者。純正風で分かりにくいまでにさり気ない、内装LEDイルミも精力的に提案。派手さより「完成度と質感」を重視する。